ボードゲームとHRD

 

*弊所ではボードゲームを活用した人的資源開発(Human Resource Development。以後HRD)をおこなっています。HRDとは、「能力開発」「リーダーシップ開発」など人材の育成・成長に関わる様々な目的と手段の両方を指す考え方です。

『ボードゲームを用いたコミュニケーション検証』

〜心理的安全がチーム作業にどう影響を及ぼすのか〜

今回、弊所で検証したHRDの内容をひとつご紹介いたします。


「会社員351名のチームにおける多様性経験の実態 −多様なチームは成果をあげているのか−(リクルート・マネジメント・ソリューションズ)」の調査レポートによると、全体の13.4%は「業務、人間関係、共に問題」というアンケート結果が出ている。アス・トライではこの部分に着目し、コミュニケーションと業務遂行に関係性があるのかをボードゲーム(Blokus)を用いて検証した。

<準備>
ブロックス(ボードゲーム),無作為に選んだ3チーム(被験者10名),ストップウォッチ,ホワイトボード

<施行方法>
ブロックス(パズル)を用いて作業を行い、作業の方法①単独作業②協力作業によって、その結果に差が出るかを検証した。

順番は①→②の順でおこなった。全員のピースが手詰まりになった時点で残ったピースを計算(個人・チーム単位)した。また、ゲームのルールとして事前に以下のことを守っていただくように促している。
 
<ルール>
①単独作業→「会話の禁止」「ピースをなるべく全部埋めること」
②協力作業→「会話はOK」「協力してピースを埋める」「アドバイスOK」

検証の結果

 

□Aチーム(参加者4名)
診断名:精神障がい(G依存)、高次脳機能障がい、ASD(自閉スペクトラム症)
□Bチーム(参加者4名)
診断名:ASD(自閉スペクトラム症)、軽度知的障がい(B2)
□Cチーム(参加者2名)
診断名:身体障がい(肢体不自由)

 

 単独作業の結果(Aチーム)
 
協力作業の結果(Aチーム)
 

【得点結果】

 
Aチーム

【得点数】
単独:-141点、協力:-71点、改善ポイント:70点
【作業時間】
単独:19分36秒 協力:40分00秒
【発言数】
単独:なし(禁止)、協力:228回/40分、48回/7分間 ※相槌の反応「ええ」「そうですね」などを含む。

Bチーム

【得点数】
単独:-135点、協力:-110点、改善ポイント:25点(119%UP)
【作業時間】
単独:14分53秒 協力:14分53秒
【発言数】
単独:なし(禁止)、協力:21回/7分間 ※相槌の反応「ええ」「そうですね」などを含む。
 
Cチーム

【得点数】
単独:55点、協力:97点、改善ポイント:42点(176%UP)
【作業時間】
単独:22分16秒 協力:31分17秒
【発言数】
未計測

 
【結果のグラフ】


得点の伸び率 ※1回目(単独作業)を100とする
 

チーム全体の結果
 

 【考察】

 A・B・Cチームともに、コミュニケーションを用いた共同作業をすることで全て得点数(得点率)が向上した。

  • Aチーム→70点UP、150%増 
  • Bチーム→25点UP、115%増 
  • Cチーム→42点UP、176%増

AチームとBチームの向上率に差が出たのは、単純に発言数の違いと仮定し、ピースの置き方について多くの知恵や工夫が集まったとすれば、Aチーム48回、Bチーム21回(7分間での比較)の差は大きいと思われる。Aチームの方がより発言数が多かった(2.3倍)ことで得点率の結果に差が出たのではないかと考える。個人のパフォーマンスが上がることでチーム全体のパフォーマンスも向上したと考える。1回目と2回目の結果の違いは、単なる学習効果と考える節もある。これについては、今後、同一人物による実施回数の積み重ねる中で、どのように変化があるか見守る必要があるだろう。











※下の画像クリックするとYoutubeが再生されます

 
 ブロックスと脳血流の関連性を紹介する動画
 
※以下、マテル・インターナショナル株式会社の発表文より転載しています

■実験施行日
2018年4月21日(土)
■監修・実施
古賀良彦(杏林大学名誉教授・医学博士)
■計測機器
株式会社スペクトラテックの「SpectratechOEG-SpO2」を被験者の頭部に装着し、ゲーム中の前頭葉16部位の脳血液量(酸素化ヘモグロビン(oxy-Hb))を測定し分析。 酸素化ヘモグロビン濃度の変化を観察し脳の活動状態を検証。
■実験対象ゲーム
(1)ボードゲーム「ブロックス」(2)スマートフォンの対戦型ゲーム
■被験者
小学2年生~5年生の男女4名(男子2名、女子2名)と各被験者の親(1名ずつ)
■検証方法
・被験者は、それぞれの父親もしくは母親と2種類の実験対象ゲームで対戦。
・2種類のゲームで遊んでいる際の、被験者の脳血流量を測定し、脳の活動状態を検証。
・各ゲームで対戦する前後に、気分及びそれぞれの親に対する情緒測定アンケートを記入。
■ボードゲームで遊んでいる最中の方がスマホの対戦型ゲームで遊んでいる時よりも脳の前頭葉の働きが活性化することが判明!
ボードゲーム「ブロックス」で遊んでいる際は、スマホの対戦型ゲームで遊んでいる際よりも、前頭葉の脳血流量が増加し、より活性化するという事実が明らかになりました。
■「先を読む力」と、対面で一緒に遊ぶからこそ生まれる「コミュニケーション」が鍵!考えれば考えるほど活性化する前頭葉にはスマホゲームよりボードゲームが適している!
さらに、ゲーム開始時からゲーム終了時までの脳血流量の変化について分析したところ、スマホの対戦型ゲームで遊んでいる際の脳血流の動きに比べ、ボードゲーム「ブロックス」で遊んでいる時の脳血流の方が、ゲーム中盤から終了直前にかけて脳の働きが、右肩上がりで活性化されていること明らかになりました。

ボードゲーム「ブロックス」で遊ぶ場合、終盤になればなるほどピースを置けるマスが少なくなり、限られたマスと残されたピースの数や形を見比べたり、相手の次の動きを考えたりしながらゲームを進める必要があります。また、対面で一緒にプレイする人とコミュニケーションをとり、時には相手の戦略を読むこともあります。

こうした勝利のために必要な意思決定のための「先を読む力」や「コミュニケーション力」によって、集中力やプランニング力、社会性を司る脳の「前頭葉」が活性化したと考えられます。

古賀教授コメント
戦略性&プレイヤー同士のコミュニケーションが脳を活性化させると考えられます。
スマホの対戦型ゲームと比較して、ボードゲーム「ブロックス」で遊んでいる時により脳が活性化したのは、常に相手の先を読むような戦略性を必要とする点や、目の前にいる相手とのコミュニケーションを自然と促す点が関係していると考えられます。